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怪物 [映画のこと]

坂元版、藪の中。
是枝裕和と坂元裕二のタッグと聞いてとても楽しみだったけど、脚本って強いんだなあ。
坂元色が濃くて、是枝作品という感じがあまりしなかったな。

怪物.PNG

母・小学校の先生・子供たち、それぞれの視点からなる3部構成だから、
仕方ないのかもしれないけど、ミスリードさせようさせようという感じがして、
違和感あるエピソードがいくつかあって。

その技巧的なところが、さらに是枝さんぽくないなと感じた要因かもしれないけど、
坂元さんのドラマも、基本的にあいまいで、余白多めだと思うんだけどな。。

とはいえ、生きづらい世界を生きる俳優陣の佇まいは見事で、
子どもたちも大人たちも素晴らしかった。


偏りが全くない人はいないから、
自分の言動で、無自覚に人を傷つけてしまうことはきっとあるし、
傷つけたことに気づける機会はなかなかない。
でも、たとえ気づけたとしても、世代や育った文化の違いとかから、
どうしてそこで傷つくのか理解できない場合もあるだろう。
傷ついた側にも、偏りがないわけじゃないと思うし。
だからせめて、片側から見ただけでわかった気になって、
手軽な正義感振りかざすのは避けるようにしないとな。
でも、考えすぎると何もできなくなっちゃうから、ほどほどに、
やりすぎは良くない。でもさ、

↑こんなふうに、ごちゃごちゃ考えさせられる内容ではあったし。

あと、母が息子に言う、「(道路の)白線からはみ出したら地獄」っていうセリフ。
車に気をつけてね、という親心ではあるんだけど、
世間の枠からはみ出したら地獄だよ、っていう意味をうっすら感じてなんだか怖かった。


余談になるけど、本作を観た後「海よりもまだ深く」を観て、
そうそうこれが是枝さんだよね、とほっとして、
偶然なのか、寄せたのかわからないけど、
「怪物」の方では田中裕子が、こちらでは樹木希林が、
幸せについて語るシーンがあって、見比べるのもおもしろいかもと思った。

(2023年/日本/125分)

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ガープの世界 [映画のこと]

ずっと観そびれていて、
もう観そびれていることすら、忘れていた作品をやっと。


この映画には、人生の全部が詰まっていた。
そんなバカな、が起こるのが人生。
この映画ほど強烈なエピソードじゃなくても、
同じ喜や怒や哀や楽が、人生には多々あって。

そして、とんでもなくつらかったり、悲惨だったりしても、
やっぱり、ちょっと滑稽でもある。

ガープの世界.PNG

主人公のガープは「子どもは欲しいけど、夫は不要」という
母・ジェニーに大切に育てられる。
やがてガープは小説家になって家庭を持ち、
ジェニーはフェミニストたちのカリスマになっていく。

とても「今」な映画でもあるなあと思った。


「正しいこと」への思いが過ぎると、暴力へ走ってしまう。
それだけが正しくて、あとは全部間違っていると。
もとは、暴力が一番間違っていると思っていたはずなのに。

多様性をみんなが受け入れられるようになるのは素晴らしい。
でも、なんだか押しつけられているような気がしたら、観るといい作品かも。


ガープが、自分は30歳だと言うシーンがある。
演じていたロビン・ウィリアムズも、当時ちょうど30歳くらい。
亡くなってどれくらい経つかなあ(確認したら8年でした)、
いないことに慣れない俳優だなあと思う。

(1982年/アメリカ/137分)


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ノマドランド [映画のこと]

原作は『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』という
車上生活をしている人たちのことを書いたノンフィクション。

映画も、実際に車上生活をしている人が出演していて、
俳優なのは、フランシス・マクドーマンドと
デヴィッド・ストラザーンだけだそう。

ドキュメンタリーの要素があるせいか、
画に説得力と独特の強さがあって引き込まれる。
その土地の空気感まで伝わってきて。

本当のノマドの人の中で演技をしている、
マクドーマンドがなじんでいるのがすごい。さすがだわ。

ノマドランド.PNG

何にも縛られず、気ままに旅を続けて…
というわけではなくて、ほとんどの人が、仕事のある所へ移りながら、
やむなく車上生活を送っている。


みんな心に傷を負っていて、
まあ高齢者も多いし、誰でも傷のひとつやふたつあるだろう。
でも、彼らは悲しみを手放さず、連れて歩いている。
けっして手放さないと決めているかのように。
自分のせいだった、と思っているように見えた。

いつかは自由になれるのかな。そうだといいな。

(2021年/アメリカ/108分)


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ジュラシック・ワールド 新たなる支配者 [映画のこと]

クリーチャーが好きなのと、
「ジュラシック・パーク」のグラント、サトラー、マルコムが
揃うというので、公開が待ち遠しかった。


今回も、不祥事的なこと多いしご都合主義だけど、
もうそんなの前からなわけで。

オールキャストのせいもあって、さらにとっちらかってるし、
ヴェロキラプトルのブルーの出番が少ないのも不満だったけど、
ストーリーに対しての期待はしてなかったから、
アトラクション映画として、なかなか楽しかった。
ひどい言いよう笑。

ジュラシックワールド3.png

ジュラシック~6作品の中で、一番好きなグラント&サトラー。
ローラ・ダーン演じるエリー・サトラーが、変わらず優しく勇敢。

トップガン同様、懐かしさ満載なので、
パークの1作目あたりは観返しておくと、より楽しめると思う。


つまんないなあって言いながら、何度も観てしまうのは、
恐竜がフルCGではなく、アニマトロニクスで目の前に登場するからなのだろう。
CGだけだと、なんとなくのっぺりして迫力に欠ける。
本作でも、車サイズの恐竜の頭部を作ったとか。

恐竜たちが、ちゃんとそこにいる。
それが伝わってくるのがいいんだと思う。

(2022年/アメリカ/147分)

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トップガン マーヴェリック [映画のこと]

「ベイビー・ブローカー」を観るつもりだったけど、
なんかスカッとしたくて。トムの引力か。


スクリーンショット 2022-07-06 204156.png


おもしろかったなあ。
映画館を出る時に、スキップしかけたの久しぶりだ。


教官になっても、マーヴェリックはマーヴェリック。
やっていることは昔と変わらず。
パイロットとしての腕もパーフェクトで、まあかっこいいこと。

ただ今回は、好き勝手には飛べない。
守るべきものがある。


本物にこだわったという映像がすごかった。
観ている側も、実際に戦闘機に乗っているよう。
重力がかかっている気がして、息苦しい(気がする)。


ジェニファー・コネリーがトムの恋人役って、80年代を意識?
当時を知っている世代には、わー!っていうキャスティング。
それにしても、今も美しい。お似合いだった。

グースの息子のルースター、
背がマーヴェリックよりだいぶ高くて、感慨深い。

そして、なによりアイスマン。


前作に寄せたカットが多くて、音楽も含め懐かしさ満載。
本作ではビーチバレーじゃなく、ビーチフットボール(というのかな?)のシーン、
若者に引けを取らないトム、どこにいるかわからない。
ひとりおじさんいる!ってならない。

やっぱりすごいな、トム・クルーズ。

(2022年/アメリカ/131分)

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トップガン [映画のこと]

「トップガン マーヴェリック」公開で、
来日していたトム・クルーズ。
なのに「ミッションインポッシブル」の新作の宣伝を笑顔でしていて。
そっちの宣伝しちゃうんだ。。


世界的スターの屈託のなさに、なんだか微笑ましい気持ちになって、
懐かしい本作を久し振りに。

しかし、何十年ぶりだろう。
ザ・80年代、これぞハリウッド。


この時代の映画って、観返すと、
ちょっと気恥しい感じがするんじゃないかと思っていたけど、
まあかっこよかった。

マーヴェリックだけじゃなく、映るもの全部がかっこいい。
他のパイロットたちや、管制塔、シルエットのトムキャットも。

若いメグ・ライアンとティム・ロビンスは、
やっぱりかわいかったし。

トップガン.png

とても素直なストーリー、王道な流れ、
言ってしまえば先も読めちゃう。
だから冷静に観ると、ドラマとしては薄いかな、とも思うけど、
そこに気づかせない、強い画と音楽。

そうそう、サントラもカセットテープすりきれるくらい、
さんざん聴いたなあ。


36年経っても、なんとも観やすく、
観る側が、何も裏切られない映画だった。

(1986年/アメリカ/110分)


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チャンス [映画のこと]

住み込みで働く屋敷から、外へ出たことがなかった庭師のチャンス。
主人が亡くなって、初めて外の世界へ。
純真無垢なチャンスの言葉は、様々な人々に勝手に解釈され、
どんどん独り歩きしていく…

チャンス.png

原題は「Being There」。
主人公のチャンスは、ただそこにいて、ありのままを話しているだけ。
それを周りが深読みしようとしたり、都合よく意味づけをしてしまう。

画的には、ほのぼの、ユーモアもあるし、
ピーター・セラーズ、シャーリー・マクレーンと大御所キャストで楽しめる。
でも、なんか独特の怖さがあって、終始心がざわざわしていた。


チャンスはテレビが好きで、どんな状況でもテレビがあると、
そちらに向かっていって、じっと観ている。
称賛も批判も、勝手な解釈もせずに。

見たものをそのまま受け取るって、
なかなかできないことかもしれないと気づかされる。
意味づけをして納得しておかないと、人間は不安なのだろう。

同じことをしていても、言っていても、
どこに立つかによって見え方、捉え方は違ってしまう。
これは受け手の問題だ。


本当のことってなに?
正しいってなに?
権力ってたまたまかも。


気持ちがざわつくけど、おもしろかった。
自分が偏ってるなって感じた時に、また観たい作品。

(1979年/アメリカ/124分)


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地球へ2千万マイル [映画のこと]

ハリーハウゼンの作るクリーチャーは、どれも魅力的だけれど、
本作の主役、怪物のイーマはちょっと別格かも。

たまごの状態で金星から連れてこられたイーマ。
こんなに哀愁ただよう怪物、他にいないと思う。

地球へ2万マイル.png

でも考えてみたら、地球で生まれたのだから、
知らない星に連れてこられて寂しいとか、そういう感情はないのかもしれない。
こちらが勝手に想像して、悲しそうだと思っているだけかもしれない。

いやいや、生まれてすぐ人間から追われる身になり、
馬や羊も、イーマが何もしていないのに、その姿に驚いて逃げ出す。
やっぱりひとりぼっちだから、寂しいじゃないか。

映画としては、あんまりおもしろくないけど、
イーマの心に寄り添いたくなる。


この映画、モノクロ版と、2007年に作られたカラーライズ版がある。
これが後から着色したとは思えないくらい自然でびっくり。

モノクロも、趣があっていいけど、
ハリーハウゼン、本当はカラーで撮りたかったそうで。
見比べると舞台であるイタリアの風景は、カラーの方がいいと思った。
女の人たちが洗濯してるシーンの色がすてきだったな。


モノクロでもカラーでも、
イーマは悲しそうなまま懸命に生きていた。
ハリーハウゼンの映画は、
俳優陣よりも作り物である彼らの方が、生きている感じがする。

(1957年/アメリカ/83分)


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おみおくりの作法 [映画のこと]

主人公・メイさんは、ロンドン市ケニントン地区の民生係。
ひとりきりで亡くなった人を弔うことが仕事だ。

20年以上、とても真摯に仕事と向き合ってきたのに、
人員整理で解雇を言い渡されてしまうメイさん。
アパートの向かいの部屋で亡くなったビリー・ストークの案件が最後になる。

おみおくりの作法.png

数年前まで定期的GYAO!が配信していたのだけど、
最近やらなくなってしまって残念。
原題は「Still Life」、静物画という意味らしい。

そんなタイトルの通り静かな作品なので、
地味でつまらないというレビューもあるし、
ラストも賛否わかれているみたい。


私はメイさんの最後の仕事、大冒険になったと思うんだけどな。
ビリー・ストークのソファの応急処置の仕方とか、
(壊れた脚の部分に、本を重ねて高さを合わせてあった)
ホットチョコレートを飲んだり、
訪ねた先で用意されていた夕食がすてきだったり、

小さなエピソードひとつひとつが、
とても丁寧に扱われていて、ユーモアもあって。
亡くなった人とも友人になれると気づかせてくれる。


やっぱり何度観ても、私はいいラストだと思う。
これはハッピーエンドだと思う。

(2013年/イギリス・イタリア/91分)

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つみきのいえ [映画のこと]

海にほとんど沈んでしまった街に、
ひとり暮らすおじいさんの物語。
第81回アカデミー賞 短編アニメ賞受賞作品。

初めて観た時、ほうっとため息が出たな。
12分で人生が描けるんだ、と思った。


スクリーンショット 2022-02-04 231551.png


余計なことを言わず、
(ナレーションありのバージョンもあるけど、基本的に無声映画です)
音楽もシンプル。とにかく余計なことしない。
静かで、絵本のような映画。
というか、絵本にもなっているみたい。


観たひとの数だけ、観た回数だけ、心の中にストーリーが生まれる。
その時によって、寂しくて泣いてしまうことも、
懐かしさに笑みが浮かぶことも、きっとあるんじゃないかな。


おじいさんの人生、観ている側の人生。
過去の思い出と、これからが
生きている限り、みんなにある。

(2008年/日本/12分)
☆2022年2月現在、Amazonプライムで配信中


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